昭和50年代、瀬戸大橋の架橋工事と共に、それまでの静かな島の景観は大きく変貌を遂げました。
ここは塩飽諸島の最も東に浮かぶ、香川県坂出市・与島。瀬戸大橋の橋台となった島です。
伝統的な産業と引き替えに、島は便利になったと言います。島内には島民専用ながらインターチェンジが設けられ、四国本土まではわずか10分で行けるようになりました。
そして、それまでの渡船からバトンを受けた琴参バスが、新たに坂出や児島へと働きに出るようになった島の人々を運んだのです。
もちろん、橋が架かろうと変わらなかったものもあります。
そのひとつが橋とは関わりなく今に続く産業、漁業です。鯛・鰆・メバル・蛸...島のまわりは、今でも多くの魚種を誇る好漁場として知られています。
とくに、橋台からは少しばかり離れた島の東部にあり、漁業で栄えた浦城集落の光景は昔のまま。変わっていません。
変わらなかった景色、変わった景色。
瀬戸大橋を走る異色のローカルバスは、大橋を望む漁港脇の潮錆たバス停から、今日も坂出を目指して走り出します。
■琴参バス瀬戸大橋線路線概要
坂出・与島・櫃石島を結ぶ琴参バス瀬戸大橋線は、 瀬戸中央自動車道の開通に合わせて、琴参バスの前身にあたる琴平参宮電鉄が昭和63年4月10日に開設した路線です。
当時は岡山側・下津井電鉄との共同運行路線であり、児島坂出間を直通で結びました。
直通が廃されたのは平成17年のことで、与島ないし櫃石島を境に本州側・四国側で系統が分割されました。
ただ、現在でも下電バスとの接続は考慮されており、坂出市内相互発着の場合は通算運賃も設定されています。
平成22年10月改正の現行ダイヤでは、坂出-与島間毎日6往復に、土休日運休の坂出-櫃石島間1往復が加わり、平日7往復・土休日6往復が運行されています。
なお、瀬戸中央道開業当初は瀬戸大橋を介して岡山香川両県を結ぶ路線バスが多数設定されており、児島坂出間のほか、 岡山高松、倉敷高松、岡山琴平、倉敷琴平を合わせた5路線が存在しました。
(25年2月訪問)